研究概要 |
脳神経細胞由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor, BDNF)とコンドロイチン硫酸(CS)結合体であるBDNF徐放製剤(CS-BDNF)をC57BL/KSJ-db/dbマウス(7W, Male)に皮下投与し(10mg/kg)、中枢神経系を介したBDNFの作用とされる摂食抑制効果を検討した。CS-BDNF徐放製剤の効果はフリーBDNFより高い傾向がみられたが顕著ではなかった。神経系へのターゲット製剤として作製したレシチン誘導体とBDNFの結合体であるレシチン化BDNF(PC-BDNF)はフリーBDNFと比較して著明に薬理効果を増強した(フリーBDNFの20倍高い)。このことは徐放により投与回数を減らすことができるのは大きなメリットであるが、血中BDNF量の維持よりもやはり神経系へのターゲットが効果の増強には必須であることを示唆している。 そこでPC-BDNFが神経系にどれほどターゲットされているかをラットを用いて検討した。PC-BDNFのPC導入数の選定に関しては細胞増殖活性を指標にしてBDNF分子当たり2〜3分子のPC誘導体を導入したPC-BDNFを作製した。 Wistarラット(4W, Male)に10mg/kgのPC-BDNFを投与し30分、5時間後大脳、小脳、脊髄を摘出し組織中のBDNF量をELISAで測定した。その結果PC-BDNFはフリーBDNFに比較して小脳、脊髄において高いターゲット性を示し、PC-BDNFはこのことにより薬理効果の増強を得ていることが示唆された。PC-BDNFがどのような機序で脊髄神経系に集積するかについては今後検討する予定である。
|