研究概要 |
難吸収性抗生物質であるvancomycin (VCM),gentamicin (GM)は経口投与後に数%しか循環血中に移行せず、bioavailability (BA)が極めて低い薬物である。しかし、腎や聴覚器毒性を持ち、有効血中濃度域が狭いので、現行の注射製剤ではTDMによる管理が必要である。したがって、薬物の効果を最大限に発揮させ、かつ毒性発現を抑え得る経口製剤の開発が強く望まれている。そこで、界面活性剤Labrasolを用いた自己微小乳化型DDS(self micro-emulsifying drug delivery system, SMEDDS)生成による、これら薬物のBAの改善を目的とした製剤設計と評価を行った。VCMを生食水で溶解した後、LabrasolあるいはビタミンE誘導体コハク酸d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000(TPGS)の溶融物を加えて様々なVCM製剤を調製し、各VCM製剤をラット回腸内に投与して経時的に血漿試料を得た。また、GMを生食水で溶解した後、Labrasol含有製剤を調製し、各GM製剤を消化管内に投与した。さらに、GM製剤の標的吸収部位を小腸下部および大腸とするために、pH感受性ポリマー、Eudragit L100(EU-L)、Eudragit S100(EU-S)でGM製剤を封入したカプセルをコーティングし、ビーグル犬に投与して経時的に血漿を得た。血漿中VCM濃度を新たに開発したLC/MS/MS法により測定した。血漿中GM濃度をポストラベル化HPLC法により測定した。VCMの回腸内投与後の吸収はLabrasolとTPGSの配合比を50%および12.5%としたSMEDDS製剤において顕著に改善された。またSMEDDSを含むGM製剤をpH感受性ポリマーでコーティングし、ビーグル犬投与したところ、BAは顕著に改善された。以上より、LabrasolによるSMEDDS製剤化は難吸収性抗生物質のBA改善に有用な手段であると考えられた。
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