研究概要 |
シクロスポリンの開発によって臓器移植の成功率は格段に向上した。また、最近ではタクロリムスの貢献度も高い。しかし、両薬剤は共通の作用機構によって免疫抑制作用を示すため、一度拒絶反応が起こると両薬剤間での切りかえを行っても大幅な予後の改善は期待できない。そのため、作用機構が両薬剤とは全く異なる我々の新規免疫抑制剤FTY720に対する臨床からの要請は非常に強い。FTY720は、感作リンパ球の1次リンパ器官へのホーミングを促進し拒絶反応を効果的に抑制する新薬候補化合物である。本剤を臨床に供給するには薬物動態、組織分布などの解析が必要であり、これを可能とするには、FTY720の抗体が必須である。 そこで抗原特異的かつ微量検出・定量の可能な酵素免疫測定法を開発するために本研究を開始した。FTY720は2-位に(4-octyl)phenylethyl基を有する2-aminopropane-1,3-diol構造をもっている。抗体調製の試みとして、既に我々は2-位側鎖の末端にSH基を有する(4-mercaptobutyl)phenylethylからなるハプテンを合成、タンパク質と結合させ免疫原を調製、FTY720に対する抗体を得た。本研究において、さらにFTY720そのものに近い(4-mercaptooctyl)Phenylethyl基構造をもつハプテンを4-フェニル酪酸から14工程で合成し抗体を作成した。このようにして得られた抗体の抗原認識部位(エピトープ)を解析した結果、FTY720の薬理活性発現に必須な構造である2-aminopropane-1,3-diolと(4-alkylphenyl)ethyl構造を認識していることが示された。さらに、微量検出・定量の可能な酵素免疫測定法を開発することができた。現在、更に特異性・精度を求めて、モノクローナル抗体調製に努力している。
|