研究概要 |
臓器移植の成功率を画期的に上昇させた薬剤は、シクロスポリンに始まりタクロリムスも大きく貢献している。しかし、これらの両薬剤は作用機構が同様であり、腎障害等の副作用がある。我々の新規免疫抑制剤FTY720は、その作用機構がこれら二者と大きく異なっていることから、臨床においてその開発が期待されている。本剤を臨床に供給するには薬物動態、組織分布などの解析が必要であり、これを可能とするには、FTY720の抗体が必須である。そこで抗原特異的かつ微量検出・定量の可能な酵素免疫測定法を確立するために本研究を開始した。FIY720は基本骨格(2-aminopropane-1,3-diol)の2-位に(4-octyl)phenylethyl基を有する構造をもっている。 本研究の初年度において、FTY720そのものに近い(4-mercaptooctyl)phenylethyl基構造をもつハプテン(AMPD-8)を4-フェニル酪酸から14工程で合成し抗体を作成した。この抗体の抗原認識部位(エピトープ)の解析結果は、FTY720の活性発現の必須構造を明らかに認識するものであり、微量検出・定量の可能な酵素免疫測定法を確立することができた。 本年度は更に特異性・精度を求めて、モノクロナール抗体調製に努力し、以下の実績を得た。Balb/c雌性マウスを(AMPD-8)-卵白アルブミン複合体で感作し、ELISA法によって抗体価の上昇を確認した。感作マウスの脾細胞をミエローマ細胞(Sp2/0-Ag14)と融合、融合細胞を得、続いて抗体産生ハイブリドーマのクローニングを2度行った。これらの過程で選択されたクローンをBalb/cヌードマウスの腹腔内に注射し、腹水を得た。次に、プロテインAセファロースを用いて腹水から抗体の精製を行い、サブクラスIgG1のモノクローナル抗体を3種類を得ることができた。
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