1.生体内で発生したラジカルを捉えるために、脳に移行して酸化的ストレスでラジカルの変換されるヒドロキシルアミン型スピンローブとしてcarbamoyl-PROXYLのヒドロキシルアミン体のアセチル体(ACP)を合成し、その体内動態および各臓器における代謝を調べた。すなわち、マウス(ddY雄、4週齢)にACPを尾静脈内投与し、臓器中のニトロキシルはX-band ESRにより、ACPはHPLCにより、また、ヒドロキシルアミンは一電子酸化後にX-band ESRによって定量した。その結果、ACPは血液脳関門を通過して脳組織に移行するが、その後の加水分解は比較的遅く、30-60分後にヒドロキシルアミン体になっていることが明らかになった。すなわち、ACPを脳のイメージング剤として使用可能であることがわかった。一方、肝臓では移行および加水分解が速く10分後ではほとんどがヒドロキシルアミン体となっていた。すなわち、臓器によってイメージングに適した時間が異なり、今後の使用に当たって注意すべき点であることが明らかになった。 2.PROXYL骨格を有するスピンプローブの3位を各種修飾した誘導体を作り、マウス頭部における分布および滞留をin vivo ESRの強度を測定することにより調べた。その結果、ヒドロキシメチル体とアセトキシメトキシカルボニル体は比較的ゆっくりした信号強度の減少があったのに対し、メトキシカルボニル体は2相性の減少を示し、脳における分布・代謝が異なることが示唆された。 3.感度および解像度の向上を目的として、^<15>N標識スピンプローブの合成を行ったが、その性質については現在検討中である。
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