1.感度および解像度の向上を目的として、[^2H]アセトンとアンモニアから重水素化carbamoyl-PROXYLおよびmethoxycarbonyl-PROXYLを合成した。これにより通常のXバンドESR測定条件において線幅が0.12mTから0.08mTまで減少し、シグナル強度が約1.5倍大きくなった。しかし、生体計測において使用しているモジュレーション(0.1mT)では1.35倍、L-バンド測定においては1.14倍にしかシグナル強度が増大しなかった。感度をあげる別なアプローチとして^<15>Nを用いたプローブ合成し、その性質を検討中である。 2.脳に移行して酸化的ストレスでラジカルの変換されるヒドロキシルアルミン型スピンローブとしてcarbamoyl-PROXYLのヒドロキシルアミン体のアセチル体(ACP)を合成し、その体内動態および各臓器における代謝を調べた。マウスにACPを尾静脈内投与し、臓器中のニトロキシルはX-band ESR、ACPはHPLC、そしてヒドロキシルアミン体は酸化後にX-band ESRによって定量した。その結果、ACPは血液脳関門を通過して脳組織に移行するが、その後の加水分解は比較的遅く脳のイメージング剤として使用可能であることがわかった。一方、肝臓では移行及び加水分解が速く10分後にはほとんどがヒドロキシルアミン体となっていた。すなわち、臓器によってイメージングに適した時間が異なり、今後の使用に当たって注意すべき点であることが明らかになった。 3.PROXYL骨格を有するスピンプローブの3位を各種修飾した誘導体を作り、マウス頭部における分布および滞留をin vivo ESRの強度を測定することにより調べた。その結果、ヒドロキシメチル体とアセトキシメトキシカルボニル体は比較的ゆっくりした信号強度の減少があったのに対し、メトキシカルボニル体は2相性の減少を示し、脳における分布・代謝が異なることが示唆された。
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