研究概要 |
生体が放射線や有害物質などの酸化ストレスに曝されると活性酸素などが生成し、タンパク質や核酸などの重要生体構成成分の損傷が起きる。酸化ストレスから生体を守るため、生体内の酸化還元状態を制御することをレドックス制御といい、本研究では、種々の活性酸素種(スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、ペルオキシラジカル)を還元的に消去する化合物を探索した。スーパーオキシド、およびヒドロキシルラジカル消去能について電子スピン共鳴法によるスピントラッピング法を用いて評価した。ペルオキシラジカル消去に関してはクメンペルオキシドラジカルの消去を直接ESRで測定した。用いた抗酸化剤は、合成フッ素化カルコン、りんご抽出物(アップルフェノン)、野菜水溶性成分、γ-トコトリエノール、カテキン、アルテピリンCのようなフェノール誘導体や、メチオニンやペニシラミンのようなチオール基を有する化合物である。ヒドロキシルラジカル消去活性に関しては、ポリフェノール誘導体やチオール基はトロロックス(水溶性ビタミンE)やグルタチオンと同等な消去活性であった。一方、スーパーオキシド消去活牲に関しては、カテキンが最も高く、次にペニシラミンのようなチオール基を有する化合物であり、茄子のような野菜の水溶性成分も消去能は高かった。またクメンパーオキサィドのようなペルオキシラジカル消去に関してはアルテピリンCはカテキンと同等の強い消去能があった。カテキンは,フェノール性の水酸基を有し,高い抗酸化活性を示すが、その消去メカニズムを、マグネシウムイオンなどの金属イオンを用いて、カテキンのフエノキシルラジカルを安定化できることを明らかにするとともに、金属イオンが電子移動過程を加速することを利用し,カテキンによるラジカル消去反応は電子移動を経由することを明らかにした。また致死量の放射線に対する種々のスピントラップ剤の防護能を調べるためマウスに8Gyの放射線を照射して30日間の生存率を調べ防護能を調べた。その結果フッ素化カルコンには効果が無く、アップルフェノン(生存率30%)およびPOBN(DRF:1.3)に中程度の放射線防御効果が認められた。
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