副腎皮質ホルモンのCYP2B発現への影響について調べるために、デキサメタゾン(Dex)と、従来から誘導剤として知られている、フェノバルビタール(PB)、pregnenolone-16α-carbonitrile(PCN)及び農薬として使われたDDTなどの場合と比較した。腎臓では、Dex投与によりCYP2B10発現が用量依存的に誘導され、発現量は雄の方が高いという雌雄差が現われた。一方、PB、PCN、DDT投与しても、腎臓にCYP2B発現を誘導しなかった。これらの誘導剤処理により、肝臓のCYP2B9とCYP2B10両方の発現が亢進し、雌雄間で相違は認められなかった。Dexは腎臓の場合と同じく、肝臓のCYP2B10発現を雌雄とも同等に用量依存的に誘導したが、CYP2B9発現は阻害した。性腺摘出は、雄肝臓のCYP2B発現を雌並みに高めた。またDex投与による腎臓のCYP2B10発現を抑制した。これらの結果は、CYP2B発現には複数の機構があり、DexとPBとは異なり、さらに性ホルモンも誘導発現に関わっていることを示唆している。 常在的なCYP2B発現には雌雄差が認められるため、その原因について検討した。思春期以前では、発現パターンは雌雄同じでCYP2B9が主分子種であるが、性成熟に伴い両性ともCYP2B10が発現してきた。しかしその後、雄ではCYP2B9発現が急減してくるので、成熟動物では顕著な雌雄差が現われた。成長過程で発現が変化した原因の一つとして、内分泌系の変動に起因すると考え、脳下垂体を摘出してCYP2B発現への影響を調べた。その結果、雄での発現が亢進し、雌雄間で違いが無くなったので、脳下垂体から分泌される因子の特定を進めている。
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