研究概要 |
N-ニトロソジアルキルアミンは環境内発がん物質でもあり、さらに生体内でも生成する発がん物質であることから,ヒトがんとの関連が疑われている.しかし,N-ニトロソジアルキルアミンの詳細な活性化機構はいまだ不明な点が多いため,純粋な化学触媒系を用いてN-ニトロソジアルキルアミンの代謝研究に応用した.化学触媒系として修飾Fenton試薬処理(Fe^<2+>・Cu^<2+>・H_2O_2)によるN-ニトロソジアルキルアミンから変異原の生成を検討したところ,N-ニトロソ・ N-メチルブチルアミン(NMB)で最も強い変異原性を発現した.NMBから生成する変異原の生成機構は,金属イオンと過酸化水素の相互作用で生成するヒドロキシルラジカルによりNMBは分解し一酸化窒素(NO)が生成する.このNOが金属イオンと共存するとNMBから変異原を生成することが分かった。また修飾Fenton試薬で処理したNMBから生じる変異原の構造は,結晶形が薄くX線結晶解析には適していなかった.そこで,アルキル鎖が一つ長いN-ニトロソ・N -メチルペンチルアミン(NMPe)を用いたX線結晶解析により、5・エチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドと決定した.そこでNMBから生成する変異原は5-メチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドと推定し別途合成した.合成した5-メチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドとNMBのFe^<2+>・Cu^<2+>・H_2O_2・NO処理から生じる変異原は,機器データと変異原活性が一致したことから,修飾Fenton試薬処理によりNMBから生じる変異原を5-メチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドと決定した.しかし、反応液中で生成する5-メチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドを定量し変異原活性と相関させたところ、反応液中の活性は5-メチル-5-ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドの生成量とは一致しなかった。以上のことから、反応液中ではさらに不安定な化合物が5-メチル-5・ニトロ-1-ピラゾリン1-オキシドへと変化している可能性が示された。
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