本研究は、酸化的ストレス時での肝臓シトクロムP450(CYP)変動とその変動に影響を与える防御的ストレス応答としてのヘムオキシゲナーゼ(HO-1)誘導におけるサイトカインの役割を解明する目的で各種サイトカイン遺伝子ノックアウト(KO)動物を用い検討したものである。本研究課題は順調に進行し、研究実績として以下のようなことを中心に解明が進んだ。本研究により、LPSによるHO-1遺伝子の発現誘導は、TNFαが重要な役割を担っており、その発現には、転写因子AP-1が必要であるが、その活性化に関与するMAPKを検索した結果、JNKやp38を介して伝達していることが明らかになった。一方、コカインによるHO-1誘導はTNFαだけでなくIL-6も重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらにBCGによるCYP3A遺伝子の調節にはIL-6が重要であることを明らかにし、フェノバルビタールによるCYP2Bの発現調節においてもIL-6が関与することが明らかとなった。さらにCYPのダウンレギュレーションにおいてもLPSとBCGでは大きく相違し、LPSはIL-6KOでもCYPを減少させるが、BCGでは認められず、この差はシグナル伝達系におけるSTAT系のリン酸化の差異が一部関与することが示唆された。以上のように、サイトカインKOマウスを用いることにより、in vivoにおける個々のサイトカインの役割解明が可能であることが判明し、遺伝子KO動物を用いる研究の意義が益々大きくなってきている。本研究課題を通して、今後さらに薬物応答性としての酵素誘導や防御系応答を包括的に解析し、さらに情報伝達系を解明することにより、個々のサイトカインの果たしているin vivoでの役割解明に期待がもたれる。
|