研究概要 |
化学物質のアレルギー性接触皮膚炎の誘発性を迅速、簡便に試験する方法として、表皮構成細胞の機能を維持した株化細胞を用いたin vitroアッセイ法の構築を目的として実験を進めた。アレルギー性皮膚炎の発症に重要な役割を果たすケラチノサイトとランゲルハンス細胞の株細胞を用いて、アッセイにおける評価指標の検討を行った。ケラチノサイトのNCE16、HaCaT細胞では、種々の炎症反応のきっかけとなるサイトカインIL-1αのmRNA、及び皮膚免疫に重要な抗原提示細胞の遊走、活性化に関与するケモカインMIP-3αのmRNA発現がアレルギー誘発性物質によって亢進されることが定量的RT-PCR解析により確認できた。ランゲルハンス様細胞のELD-1ではサイトカインTNFの刺激で、成熟活性化のマーカーであるケモカインレセプターCCR7mRNA発現、及びT細胞の活性化に関与する細胞表面のCD54タンパクの発現が顕著に誘導され、ELD-1が免疫応答性を有していることが確認できた。化学物質の刺激では、強いPKC活性化作用を有するTPAによってこれらが大きく変動したが、既知の皮膚炎誘発性物質では単独処理の場合それらの変動はわずかであった。 一方、アレルギー性物質により変動する因子をさらに網羅的に探索するため、HaCaT, ELD-1細胞にアレルギー性物質DNCB及び非アレルギー性物質BCを暴露し、DNAマイクロアレイ法により発現遺伝子の変動を比較検討した。両細胞で変動した遺伝子数はDNCB刺激の方が多く、HaCaTではDNCBにより顕著に減少した遺伝子2個、増加したもの4個、ELD-1では顕著に減少した遺伝子4個が見出された。 以上、表皮免疫担当株化細胞の遺伝子発現への化学物質の影響解析から、これらの細胞を用いた化学物質のアレルギー性皮膚炎誘発性の評価指標として有効な、いくつかの候補遺伝子が選別できた。
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