化学物質のアレルギー性接触皮膚炎誘発性を迅速、簡便に試験するアッセイ法の構築を目的として、表皮構成細胞の株化細胞を用いてアッセイにおける評価指標の検討を行った。株化ケラチノサイトHaCaT細胞、ランゲルハンス様株化細胞のELD-1に既知アレルギー誘発性物質を曝露し、サイトカイン、ケモカイン等のmRNA発現をリアルタイムRT-PCR法により定量的に解析した。HaCaTではサイトカインIL-1α、TNF及びケモカインMIP-3α mRNAの発現亢進が確認された。ELD-1では化学物質の単独処理による変動はわずかであった。さらに皮膚炎誘発時にケラチノサイトから分泌されると考えられるIL-1α、TNFを直接両細胞に作用させたところ、HaCaTではIL-1α、TNF自身やMIP-3αの、またELD-1でもそれら自身のほかIL-6、IL-8等のmRNAおよび分泌が著しく亢進することが明らかとなり、アレルギー性接触皮膚炎の誘発過程においてケラチノサイトとランゲルハンス細胞が密接に相互作用しあうことが予想された。 一方、アレルギー性物質により変動する因子をさらに網羅的に探索するため、DNAマイクロアレイ法により発現遺伝子の変動を解析した。両細胞で変動した遺伝子数はアレルギー誘発性物質のジニトロクロロベンゼン処理の方が非アレルギー性物質処理より多く、HaCaTでは顕著に減少した遺伝子2個、増加したもの4個、ELD-1では顕著に減少した遺伝子4個が見出された。 以上、表皮免疫担当株化細胞を用いた化学物質のアレルギー性皮膚炎誘発性の評価指標として、いくつかの候補遺伝子が選別できた。今後さらに特異性の高い鋭敏な評価系の構築のため、両細胞の混合共培養系の検討を計画している。
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