研究概要 |
相模川は神奈川県中央部を南北に流れ,河口の平塚で相模湾に注ぎ込む。流域に内陸型工業地帯を抱え,また一部の支流で比較的高濃度のダイオキシンが検出されている。そこで本研究では相模川の汚染状態を総合的に評価するために、上〜下流部の底質抽出物を試料として,そのHepG2細胞に対するEthoxycoumarin O-deethylase(ECOD)活性誘導を指標としたバイオアッセイにより検討した。測定点の最上流部に位置する小倉橋ではECOD活性の誘導は僅かで,比較的汚染度の低いことが判明した。しかしながら、中〜下流部の下溝,厚木,倉見および四之宮では誘導に強弱はみられるものの、用量依存的なECOD活性の誘導が認められ,いずれも底質100mg-eq/mlの用量で陽性コントロールである3-メチルコラントレン2.5μMによる誘導と同レベルかそれ以上であった、これらの地域は内陸型工業地帯の工場群の立地とほぼ一致し、工場排水等に含まれる多環芳香族炭化水素やダイオキシン類による汚染が進んでいることが考えられる。河口の平塚ではECOD活性の誘導は中〜下流部4地点に比べて弱く、上流の汚染の影響はみられないことが判明した。 3-MCならびに底質試料によるECOD活性誘導に見られるの逆U字型の用量-反応曲線は転写レベルでは観察されないことを報告しているが、今回、タンパク質レベルでこの高濃度域におけるダウンレギュレーションが観察され、翻訳レベルでの影響であることが判明した。
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