研究概要 |
本年度においてはダイオキシン類のA549細胞に対する細胞増殖促進作用のメカニズムをDNAアレイならびにRT-PCR法により検討を行った。 [方法]コントロール細胞、AhR過剰発現細胞ならびにダイオキシン曝露細胞よりtotal RNAおよびpoly-A RNAを抽出した。得られたpoly-A RNAを[^<32>P]-dATP存在下において逆転写反応に供し、得られた[^<32>P]-cDNAをDNAアレイとハイブリダイズさせた。用いたDNAアレイは約110種の細胞周期関連因子をナイロンメンブラン上にブロットしたものである。一晩ハイブリダイゼーションを行った後、アレイを数回洗浄し、その後オートラジオグラフィーより各遺伝子の発現量を確認した。RT-PCR法においては、total RNAを逆転写した後、各遺伝子に特異的なプライマーを用いて[^<32>P]-dCTP存在下においてPCRを行った。得られたPCR産物を10%アクリルアミド電気泳動にて分離し、オートラジオグラフィーより各遺伝子の発現量を確認した。 [結果・考察]DNAアレイを用いて細胞周期関連因子の発現におよぼすAhRならびにダイオキシン類の影響を検討したところ、コントロール細胞に比較してAhR過剰発現細胞ならびにダイオキシン曝露細胞においては、CDK4, PCNA, MM-1ならびにCDC10-like等のDNA複製に関与する因子の発現量の増加が認められた。その一方でG2/M期の調節に関与するサイクリン類ならびにそれ等に対するキナーゼ類にも差異は認められなかった。これらDNAアレイにおける結果はRT-PCR法によっても再確認された。以上の結果よりダイオキシン類はA549細胞においてDNA複製に関与する因子の発現量を増加し、その結果として細胞増殖を促進することが示唆された。
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