研究概要 |
これまで、大麻抽出物及びtetrahydrocannabinol(THC)には内分泌系への影響が報告されていたが明確でなかった。本研究では、これに関連して大麻抽出物及び大麻成分(カンナビノイド)の内分泌撹乱作用について基礎的検討を行った。 まず、大麻抽出物及びカンナビノイドを用いてラット精巣ミクロソーム中のステロイド生合成系への影響を検討した。その結果、大麻抽出物(THCA種及びCBDA種)及びTHC、cannabidiol(CBD)、cannabinol(CBN)にプロゲステロン17-水酸化活性の阻害作用が認められた。また、ラット肝ミクロソーム中のテストステロン6-及び16-水酸化活性並びにアンドロステンジオン生成活性は、大麻抽出物並びにTHC, CBD, CBNにより阻害された。従って、大麻粗抽出物及びカンナビノイドにテストステロン生合成及び代謝酵素阻害作用ががあることが明らかとなった。 ヒト乳ガン細胞(MCF7)を用いたエストロゲン増殖検定法(E-スクリーン法)により試験を行ったところ、THC, CBD, CBN自身には有意な作用は確認できなかったが、THCA種の大麻抽出物を用いた場合、顕著な細胞増殖が認められた。さらに、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとしたレポータージーンアッセイ法を用いた検討では、THCA種及びCBDA種のいずれの吸煙抽出物においても有意な転写活性の用量依存的な上昇が認められた。 これらの結果から、大麻粗抽出物及び大麻吸煙抽出物は内分泌攪乱作用を有し、強いエストゲン様物質が存在することが明らかとなった。
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