昨年度に分子育種した微生物は高い水銀浄化活性を有することが判明したので、今年度は、浄化後の微生物の回収を容易にするために、アルギン酸ナトリウムを用いて、本組換え微生物を直径約3mmのビーズ状の固定化細胞とした後、その耐久性さらに実用化に向けた条件検討を行った。その結果、以下の事項が明らかとなった。 (1)直径2.7mmの固定化細胞は最も高い水銀取り込み量を示した。 (2)本固定化細胞は、水銀濃度が比較的広範囲においても利用でき、また、無機水銀、フェニル水銀の両水銀とも濃度が30μMまで、ほぼ完全に浄化できることが確かめられた。 (3)本固定化細胞は、低栄養条件下あるいは他の重金属共存下においても高い水銀浄化活性を示した。 (4)本系は、繰り返し利用しても高い浄化活性を示したことから、本システムは排水中の水銀浄化法として有用であることが示唆された。 以上の結果から、本研究で構築した、生物活性を利用した水銀浄化法は従来の生物浄化法と異なり、少なくとも水銀化合物が再び環境に拡散して環境を再汚染するという懸念が少なく、また、固定化細胞を作成し、それを利用することにより浄化のために用いる微生物による汚染という心配もなく、利用しやすいと考えられる。
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