研究概要 |
1)末端機能ユニット(Gb3の糖鎖部)数、核構造の異なるカルボシランデンドリマーの合成 カルボシランデンドリマーはケイ素原子を核に持ち、スペーサーを介して末端機能ユニットを結合した基本構造を持つ。まず、末端機能ユニットとして、ベロ毒素受容体であるGb3の糖鎖部(グロボ3糖)を9,18,36個有する第1、及び第2世代のカルボシランデンドリマーを新たに合成し、ベロ毒素(Stx)の細胞障害活性の中和活性、Stxに対する結合活性、の両活性についてその他のカルボシランデンドリマーと比較検討を行った。その結果、Stxに対する強い中和活性には、1分子中のグロボ3糖数が6個で十分であること、むしろ個々のグロボ3糖の空間的距離がクラスター効果の発現に重要であることが明らかとなった。 2)グロボ3糖数、核構造の異なるカルボシランデンドリマーの生体における活性評価 これまでに合成してきた一連のカルボシランデンドリマーを用い、生体内におけるStxの毒性中和活性について比較検討を行った。具体的には、マウスに致死量のStx2を単独投与または各化合物と共投与し、致死性の阻害活性について検討を行った。 その結果、合成した第0-3世代すべてのカルボシランデンドリマーのうちStxによる致死性を有効に阻害したのは、第1世代でグロボ3糖数が6個の化合物、第2世代でグロボ3糖数が18個の化合物の2種のみであった。両者に共通する構造上の特徴は、スペーサーを介して左右対称にグロボ3糖を3個、および9個づつ有する点である(dumbbell型)。一方両化合物のStx1および2それぞれのB-subunitに対するKd値をBiacoreを用いて決定したところ、他の第1世代、第2世代のカルボシランデンドリマーと大きな差違は認められなかった。これらの結果から、末端機能ユニットとしてグロボ3糖を高度に集積させたカルボシランデンドリマーが、生体内においてStx中和活性を示すためには、Stxに対して高い親和性を持って結合するだけでは不十分であること、その構造中グロボ3糖は左右対称にdumbbell型に配置されていることが必要であること、が明らかとなった。現在、生体内で有効に作用するための最適構造を決定するために、dumbbell型を基本骨格とし、そこに存在しているスペーサーの長さ、末端のグロボ3糖数、などのfactorについて最適化を行いつつある。
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