研究概要 |
1.うつ病患者の病型と治療成績との関係 九州大学心療内科を受診したうつ病またはうつ状態患者の病型と予後の関係をプロスペクティブに検討した。1999年12月1日から2000年5月31日までの間に新患外来を受診した患者で、DSM-IVの大うつ病性障害、気分変調性障害、抑うつ気分を伴う適応障害および特定不能のうつ病性障害の診断基準を満たした者は計157名であった。この中で、6ヶ月間完全に外来でフォローされた65名について、Hamiltonうつ症状評価尺度(HAM-D)およびZungうつ症状自己評価尺度(SDS)でうつ症状の改善度を経時的に評価した。抑うつ症状を呈するどの病型も治療開始3ヶ月で、良好な治療成績が得られた。その効果は6ヶ月後においてもほぼ維持された。とくに大うつ病性障害でその成果が著しかった。軽症うつ病が心療内科における治療でも、その病型にかかわりなく効果が得られることが証明された。また初回面接のみで、他院に紹介または助言を加えて前医に戻した患者45名中回答のあった29名での3ヶ月後の成績は、約半数で「改善」以上の効果が得られた。このことは、軽症うつ病においては、専門科にかかわず薬物中心の治療で対応できることを示唆する。(心身医学42:575-584,2002) 2.うつ病既治療群と未治療群の心身医学的治療による医療経済学的効果 治療費は外来通院の未治療者が既治療者より高かったが、治療効果を考慮した評価では、未治療群の方が高いcost-effectivenessが得られた。うつ病については発症早期より適切な診断と治療をすれば費用効果面においても経済的であることが明らかになった。この事実は軽症うつ病には、薬物療法に支持的心理療法を加えた心身医学的治療の医療経済学的効果が高いことを証明するものである(第42回日本心身医学会総会ワークショップにて発表)。
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