研究概要 |
本研究では、鹿児島大学総合病院情報システム(THINK)に蓄積されている患者基本情報・病名診断情報・処方情報・注射情報・臨床検査結果情報・手術情報・看護情報を統合し、医薬品の効果ならびにリスク評価を行うための薬剤疫学データウェアハウスを構築した。 データベースには、病名等のデータをスタースキーマと呼ばれる構造で結合し格納した。今回、この薬剤疫学データウェアハウスには2001年1月から2002年12月までの2年間の入院、外来の全症例のデータを格納し、データマイニング手法にはOLAP (On Line Analytical Processing)ツールを利用した。 本システムを用いて医薬品リスク評価として、メルクマニュアル第17版(発行:日経BP社)に掲載されている、高齢者における薬物間相互作用に記載されている薬剤を参考に、多剤投与における薬剤間の副作用、相互作用等、医薬品の効果とリスク評価を行う場合の支援システムとしての有効性に対する評価を行った。その結果、70歳以上の高齢者において、テオフィリンとエリスロマイシン等の併用例が存在することが判明した。 また、臨床検査値による副作用リスク早期発見の例として、チクロピジン投与患者における血小板値ついて検索を行った。その結果、チクロピジン投与患者中、血小板数未測定例が一部存在し、また血小板数が20,000/μl以下である例も存在することが判明した。 これらの結果より、本システムによる薬剤相互作用のチェック、ならびに継続的な医薬品副作用のモニタリングの必要性が示唆された。また、データベースの検索に要した時間は、単剤の検索は17±2s、併用薬剤の検索は65±17s、チクロピジン投与例中で血小板数が20,000/μl以下の検索は37sと短時間であった。 このように、多重かつ複雑な医薬品のリスク評価を短時間に実行可能であることを確認した。
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