内視鏡検査における偶発症は胃カメラの時代には機械的な合併症が過半数を占めていたが、柔軟なファイバースコープの開発とテレビ内視鏡の発達により、機械的な合併症は著減した。一方、多くの人達を対象として検査が普及した為に、薬剤による鎮静法が多用され、薬剤による合併症が増加した。そこで、1999年に刊行された「消化器内視鏡ガイドライン」に示されている各種前処置に関する調査を実施した。本年度は前処置の種類による合併症の発生と予防に関するクリニカルパスの検討を第一目標とした。先ず、第72回日本消化器内視鏡学会関東地方会の特別講演にて「わが国の医療の現状と今後の課題-消化器内視鏡とクリニカルパス-」として、専門医療における診療情報開示、安全性ならびに医療水準の確保などを併せて、専門学会が取り組まなければならないことを示し、臨床的に調査した各種前処置に関する安全性と受診者の満足度の観点から、鎮静剤の使用は限定すべきであることを報告した。さらに、安全で医療レベルを保った内視鏡検査を実施することを目的として、前処置に関するクリニカルパス作成のevidenceとなる調査を実施した。複数の内視鏡認定医により、受診者のinformed consentに従った前処置を選択して、コメディカルと受診者による客観的評価を元に比較検討した。概略は受診者の約80%は前投薬なしでも苦痛無く内視鏡検査を受けられることと、客観的な苦痛度は受診者とコメディカルスタッフの評価に乖離が認められた。静脈麻酔薬を投与した群の苦痛度は全体に低下傾向にあったが、意識低下例ではコメディカルスタッフによる苦痛度(苦悶状態)は無投薬例より増加傾向を示した。従って、前投薬使用時の受診者本人の評価は客観性と安全性の点でリスクが増すものと考えられた。平成14年度には詳細な分析結果をまとめて日本消化器内視鏡学会誌に投稿する計画である。
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