診断及び治療法としても発達した消化器内視鏡は全国調査によると、治療及び検査前投薬による合併症が問題となっている。本研究では医療安全管理、高度専門医療などの視点より、消化器内視鏡のクリニカルパスに関する基本的研究を計画した。初年度の検討では、前投薬の有効性に関する客観的評価の結果、受診者の約80%は前投薬なしで、苦痛無く内視鏡検査を受けられ、前投薬の必要性は20%以内であり、医療安全管理の面では必要最小限の使用とすべきで、クリニカルパスの基礎的要件であると考えられた。以降、消化器内視鏡関連学会、研究会、研修会においてクリニカルパスに関連する事項の検討を継続してきた結果、検査前投薬の使用は安全管理およびクリニカルパスの基礎的検討事項であること、および診療介助者である看護師による客観的評価の意義などの価値が認められる方向性が明らかとなった。 14〜15年度、クリニカルパスとリスクマネージメントに関する文献検索により、リスクマネージメントに関する220件の論文の内で相互に関連した論文は5編のみであった。また、前投薬の選択、適応、効果に関する調査では、National Library of Medicineの2001〜2003年間で120件の文献の内、前投薬の有効性は低く使用は必須ではないと指摘されていた。尚、わが国では消化器内視鏡検査前投薬の選択、適応、効果などに関する二重盲検試検法による検討は殆ど報告されていない。当学内における検討として、クリニカルパス委員会、並びに医療安全管理委員会の副委員長の立場から、具体的なクリニカルパスの作成に関与し、消化器内視鏡をはじめ診療各科におけるパス作成を推進した。加えて、付属病院の診療録管理センター長として、電子カルテ化において、クリニカルパスを電子カルテ化する検討にも参画し、2004年度には24診療科において約90疾患のパスを作成、試行し、2005年度には本試行への移行が実現可能な状況に至っている。 2004年度には調査結果と数年来の検討の結果に考察を加え、日本病院管理学会誌へ投稿した。
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