1.遺伝子ターゲッティングによってBRCA2遺伝子座に以下のアレルを様々な組み合わせで導入した。 (1)完全欠失のアレル(null) (2)コンディショナルな欠失アレル(con) (3)C末端領域が欠失した変異アレル(tr) 2.BRCA2条件欠失株の作製と表現型の解析 BRCA2の条件欠失細胞(null/con)からBRCA2を欠失させると、細胞は増殖を停止し致死となった。 このことからBRCA2は細胞増殖に必須であることが明らかとなった。 3.BRCA2部分機能欠損株の作製と表現型の解析 BRCA2のコンディショナルヘテロ細胞(con/tr)から以下の2種類のBRCA2の部分機能欠損株を作製した。 (1)中央の8個のアミノ酸繰り返し配列(BRCリピート)のうち3番目のBRCリピート以降のC末端を欠く変異BRCA2の発現株(ERC3) (2)C末端の核移行シグナルを欠く変異BRCA2の発現株(ΔNLS) <表現型の解析> (i)細胞増殖能 ΔNLSは野生型細胞と同じ速度で増殖したが、BRC3は倍加時間が正常と比べて1.25倍長くなっていた。 (ii)DNA損傷に対する感受性 ΔNLSではシスプラチンに対する感受性が亢進しており、BRC3ではシスプラチンや電離放射線に対する感受性が亢進していた。 (iii)DNA損傷後のRad51フォーカス形成 BRC3では電離放射線照射後の核内Rad51フォーカス形成が観察されなかった。 (iv)遺伝子変換効率と遺伝子ターゲッティング効率 BRC3では両者とも野生型細胞に比べて顕著に低下していた。 以上の結果よりBRCA2は相同DNA組み換えに関与しており、DNA損傷時にRad51のDNA損傷部位への招集を促進していると考えられた。 4.今後の展開について (1)BRCA2のN末端およびC末端に存在する保存領域の機能を調べるために、それぞれの領域が欠失したBRCA2変異株を作製し表現型を解析する。 (2)Rad51パラログとのエピスタシスを明らかにするために、BRC3変異とパラログ遺伝子欠失変異との二重変異株を作製する。
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