福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は、重度の筋ジストロフィーに脳奇形を伴う常染色体劣性遺伝性神経筋疾患であり、日本に多く、悲惨な病気である。本研究では、原因遺伝子産物フクチンの特異抗体を作成し、フクチンの局在、機能解析を行ない、また本疾患のモデルマウスを作成し、病態解析を行なうことを目的として、以下のことを明らかにした。 フクチン特異的抗体は、動物細胞に強制発現させたフクチンと反応するものがいくつか得られたが、内在性のフクチンを検出できない。近年の我々の研究などからフクチンは糖鎖修飾酵素ではないかと推測しており、多くの既知の糖転移酵素と同様内在性フクチンはごく微量しかないため、抗体による内在性蛋白の検出ができないと考えられた。すなわちフクチン抗体を用いた解析は困難であることがわかった。一方、強制発現細胞の免疫組織染色よりゴルジ体に存在することがわかり、糖転移酵素である可能性と矛盾しない。 FCMD患者において遺伝子変異を検索し、発症原因と考えられるいくつかの突然変異を新たに発見した。 フクチン融合蛋白を用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより質量分析法などを用いてフクチン結合蛋白の同定を試みている。いくつか候補になる蛋白を得たが、実際に結合している蛋白であるかどうか確認している。一方で、糖転移酵素としてのフクチンのターゲット蛋白と、形成している可能性のある複合体のパートナーの同定へ向け、二次元電気泳動法、免疫沈降法、two-hybrid法を用いて検索している。 3'非翻訳領域にレトロトランスポゾンを組み込んだノックインマウスの作成に向け、コンストラクトは作成終了し、ES細胞への導入、スクリーニングを行っている。 福山型筋ジストロフィーの類縁疾患であるmuscle-eye-brain病(MEB)の原因遺伝子が糖転移酵素POMGnT1遺伝子であることを同定した。
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