研究概要 |
<研究の実績概要> SRYはヒトを含む哺乳類において男性性分化の鍵を握るタンパク質である.しかしながら単離されてからl0年以上が経過しているが,依然としてSRYが調節する遺伝子は現在まで不明のままである.またSRY遺伝子自身の発現調節やSRYと相互作用するタンパク質も明らかでない. 我々はまずSRYと相互作用するタンパク質の同定を試みた.他の生物種ではエストロゲンの産生と作用が性決定や性分化の鍵を握ることが多い.そこでSRYがエストロゲン受容体(ER)の機能を抑制することで,男性の性決定に関わる可能性を考えた.ERαおよびERβの過剰発現ベクターをERE(estrogen responsive element)gがルシフェラーゼの上流に挿入されたレポーター遺伝子と同時にCOS1細胞に導入し,SRYの存在下でのルシフェラーゼ活性を検索した.結果,SRYはERαおよびβの持つ転写活性化能を抑制することが判明した.この活性はSRYのHMG boxの一部からC末端側を欠失する,ヒトのXY女性に由来するSRYタンパクでは認められなかったが,SRYのC末端側の41アミノ酸を欠失する症例に由来するSRYでは正常SRYと同様の活性の低下を認めた.現在,SRYとERの直接相互作用の確認のため,GST-pull downアッセイおよびCOS1細胞を用いたtwo hybrid systemによる検索を進めている. SRY遺伝子の発現調節機構を知るえめに,SRY遺伝子自身がそのプロモーター領域にSRY結合配列を有することに着目した.SRYプロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入したコンストラクトを作成し,これとSRY,および変異型SRYを同時に発現することで,SRYが自身の遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかを検索した.結果SRYは自身の遺伝子発現に抑制的に機能することが明らかになった.
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