研究概要 |
平成13年度 1.変異解析:我々が確立したゲノムDNAからTRKA遺伝子のすべてのエキソンを増幅し直接塩基配列を決定する方法を用いて日本人先天性無痛無汗症(CIPA)患者家系とそらに海外から依頼された症例の解析を進めた。 2.TRKA遺伝子のハプロタイプ解析:日本人患者および正常コントロールで、我々が独自に見いだしたTRKA遺伝子内に位置する8個の多型部位(IVS2+49C/T, IVS2+84G/A, IVS5+100C/T, intron 10:D1S506,IVS13+118T/C, exon 14:c.1740G/A, IVS14-4A/delA, exon 15:c.1953C/T)について解析しハプロタイプを調べた。 3.日本人CIPA患者での創始者変異の証明:患者の遺伝子変異とハプロタイプの相関を調べ、日本人CIPA患者の半数以上に検出される変異(R548fs)が正常コントロールには非常にまれなハプロタイプと連鎖するという結果が得られた。これにより、このR548fs変異は共通の祖先に由来する創始者であることが強く示唆された。 4.エキソントラップ法を用いたスプライス枝分かれ部位の変異(IVS7-33T>A)の証明:TRKA遺伝子のエキソン7/イントロン7/エキソン8を含む2.6kbのDNA断片を、LongPCR法により患者および正常コントロールから増幅し、エキソントラップベクターであるpSPL3ヘサブクローニングし実験に用いた。COS-1細胞にトランスフェクションすることにより得られたTRKAmRNAをRT-PCR法により解析することによりIVS7-33T>A変異がスプライス変異を起こすことを明らかにした。 5.1番染色体の片親性ダイソミーの証明:患者と両親について、TRKA遺伝子が位置する1番染色体および2番から22番染色体に約10cM間隔で設定されているマイクロサテライトマーカーを用いて、allelotypeを解析した。1番染色体に位置するマーカーの分析では、この患者はがホモ接合体であり、しかも遺伝子変異を有すると考えられる父親の染色体に由来することを示唆する結果が得られた。さらに、その他の染色体について父親と母親の両者に由来しメンデル遺伝している結果が得られた。以上から、この患者は父性片親性アイソダイソミーによりCIPAを発症したことが推察された。
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