研究概要 |
平成14年度 1.TRKA遺伝子への部位特異的変異導入:正常TRKAcDNA発現プラスミドベクターを準備し、これに国外8家系・国内24家系(合計32家系)の先天性無痛無汗症患者(CIPA)において検出された11個のミスセンス変異を導入した。 2.発現プラスミドの培養細胞へのトランスフェクション:正常および変異TRKAを含むcDNAを、リポゾーム法を用いて、TRKAを発現していない神経細胞由来の細胞株にトランスフェクションした。 3.発現細胞のシグナル伝達機能の解析:トランスフェクションした細胞のNGFに対する応答をTRKAタンパクの自己リン酸化されたチロシン残基を検出することにより調べた。 4.結果:正常TRKAタンパク質前駆体は、神経細胞株において細胞内プロセッシィングを受け、NGF依存性に自己リン酸化されることが観察された。細胞外ドメインの変異体のうち2個(L93P, L213P)は、正常とは異なるプロセッシングを受け、神経細胞株でのリン酸化反応は減弱していた。チロシンキナーゼドメインの変異体5個(G516R, G571R, R643W, R648C, G708S)のプロセッシングには異常は認めないが、どの変異体でもリン酸化反応が著しく減弱していた。一方、海外のCIPA症例において、ダブル変異とトリプル変異として検出されたミスセンス変異(R85SとH598Y ; G607V)は、いずれも正常と同等の自己リン酸化反応を示し、他の研究者からの多型解析の報告とも合わせて、おそらく特定の人種(民族)にのみに特異的に検出される多型であると考えられた。また、残るD668Y変異体は非常にまれな多型か、もしくはリン酸化反応に影響を与えることなくTRKAの機能を阻害する可能性が示唆された。
|