1)吸入により痙攣発作を惹起できるflurothylを間代性痙攣発作が発現する程度に1日1回8日間吸入させたマウスでは間代性痙攣の時間が短縮され、さらに1カ月ホームケージで飼育するだけで、再度のflurothyl(FE)吸入により強直性痙攣まで発現した。 2)flurothylを吸入させる前に抗てんかん薬のvalproate、zonisamideあるいはphenytoinを投与して1ヶ月後の痙攣発現パターンを観察したところ、valproateおよびzonisamideでは強直性痙攣の発現が抑制されたのに対して、phenytoinでは生理食塩水投与群と変わらず強直性痙攣の発現が認められた。 3)本痙攣発作に対して、グルタミン酸神経系の関与について検討したところ、NMDA受容体拮抗薬であるMK-801は用量依存的にFEによる強直性痙攣発作の発現とその程度を抑制したが、間代性痙攣には全く影響しなかった。また、反復投与によっても間代性痙攣には影響しなかったが、ホームケージで飼育している間に増強される強直性痙攣がさらに増強されることを明らかにした。 4)痙攣準備性ができている動物、すなわち痙攣易発動物であるスナネズミを用いてFE負荷実験を行った。スナネズミは初めてFEを吸入させることで、間代性痙攣が発現するが、その潜時はマウスとそれ程大きな差は見られなかった、しかし、間代性痙攣から強直性痙攣発現までの時間は極めて短く、痙攣を発現する神経サーキットがすでにできあがっているものと推察された。スナネズミに脳波測定の為に慢性的に電極を植え込み、FE吸入の間の脳波変化について記録したところ、大脳皮質に始まる高振幅の棘波が見られ、それが扁桃体あるいは海馬に伝播することで間代性痙攣が惹起されることが明らかとなった。しかし、間代性痙攣から強直性痙攣が発現するまではこれら3部位の脳波はサイレントであり、これら以外の部位に異常脳波が発生し、惹起されることが窺われた。 5)この強直性痙攣発現メカニズムを検討するために脳内神経伝達物質を枯渇させることにより検討したところ、脳内ドパミンを枯渇させるdesipramine+6-hydroxudopamine(6-OHDA)、あるいはノルアドレナリンのみを枯渇させるDSP-4を投与した動物ではその発現パターンはほとんど変化せず、従来の電気刺激によるkindlingとは異なっていた。
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