研究概要 |
前年度に引き続き,研究代表者は,当院心臓血管外科(旧第二外科)を受診した冠動脈バイパス術予定患者を対象に,抗血小板剤アスピリンと高脂血症治療剤アトルバスタチン併用による冠動脈バイパス術後の血小板機能改善効果について検討した.今回,これまでの症例に本年度の症例を合わせ,術後最長28日目まで追跡できた33症例についてまとめた. 血小板凝集能は,全血を用いるscreen filtration pressure法および多血小板血漿を用いる比濁法でそれぞれ評価した.放出反応は,多血小板血漿を用いた凝集能測定後の上清中のsP-セレクチンおよびトロンボキサンB_2濃度をELISA法で測定することにより評価した.循環血液中のこれら分子の濃度についても検討した. アトルバスタチンは,術後14日目以降,総コレステロールおよびトリグリセライドを術前値に比して有意に低下させた.アスピリンとアトルバスタチン併用群では,術後14日目以降,全血血小板凝集能がアスピリン単独群に比して有意に抑制された.アスピリンは,術後のコラーゲンおよびアラキドン酸で惹起させた多血小板血漿凝集を抑制した.しかし,この抑制効果はアトルバスタチン併用により影響されなかった.sP-セレクチンの循環血液中濃度は,術後7日目以降,併用群が単独群に比して有意に低かった.トロンボキサンB_2の循環血液中濃度は,術後14日目以降,併用群が単独群に比して有意に低かった.したがって,アスピリンとアトルバスタチン併用により,血小板凝集能は効果的に抑制されると考えられた.また,血小板活性化抑制作用は,アスピリンとアトルバスタチン併用群において強く現れることが示唆された.これらの成績から,冠動脈バイパス術後のアスピリンとアトルバスタチン併用投与は血栓形成を効果的に防止できるものと考えられた.
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