研究概要 |
研究代表者は,平成13年度から平成15年度の間に,抗血小板剤の血小板凝集および放出反応に及ぼす影響とその効果を評価するマーカーとしてのP-セレクチンの有用性について研究した.まず健常人から得た多血小板血漿(PRP)を用いて血小板凝集能を測定し、アスピリンなどの抗血小板剤はPRP凝集を抑制するとともに可溶型P-セレクチン(sP-セレクチン)などの血小板内物質の血小板からの放出反応も抑制すること,これらの作用は薬物により異なることを明確にした.さらに,最近開発されたscreen filtration pressure法による全血血小板凝集能測定装置を用い,抗血小板剤の血小板凝集抑制作用を測定し,PRP凝集能の成績と比較することにより,これら薬物の作用機序の違いを明確にすることができた.つぎに,当院心臓血管外科において冠動脈バイパス(CABG)を施行した患者を対象に,CABG後の血栓形成予防に対する抗血小板剤アスピリンと高脂血症治療剤アトルバスタチンの併用療法の有用性を評価した結果,アトルバスタチン併用群ではCABG後14日目にsP-セレクチンなどの循環血液中濃度がアスピリン単独群に比して有意に低下したこと,ADPで惹起したPRP凝集がアスピリン単独群に比して有意に抑制されるとともに凝集に伴うsP-セレクチン,形質転換増殖因子(TGF-β1)およびトロンボキサンB2の放出もアスピリン単独群に比して有意に抑制されたこと,アトルバスタチン併用群ではCABG後14日目において全血をADPで刺激したときの全血血小板凝集がアスピリン単独群に比して有意に抑制されたこと,などの成績を得た.以上のことから,抗血小板剤の効果を評価する上で,血小板凝集能およびP-セレクチンの測定は有用性が高いことを明確にした.
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