研究概要 |
血液脳関門において、周皮細胞は血管内皮細胞とアストロサイトの間に基底膜に包まれて存在する。しかし、その意義や成熟度、機能性は不明である。周皮細胞、血管内皮細胞、および、アストロサイトの血液脳関門Tight Junction形成への役割を比較検討し、周皮細胞特異的な遺伝子を探索するため、我々は、SV40温度感受性突然変異株tsAラージT抗原遺伝子を導入したトランスジェニックラット(SV40TG-RAT)より得られる種々細胞株を用いることを試みた。脳血管内皮細胞株、および、アストロサイト株は既に同種ラットから樹立されており、我々は脳血管周皮細胞株(TR-PCT)を樹立したところ、サイトカインに応答する多機能性細胞株であることが確認された(Asashma T, Iizasa H, Terasaki T., et al., Eur.J.Cell Biol., in press, 2002)。また、同ラットから樹立した骨髄由来血管内皮細胞株(TR-BME)は、in vitroマトリジェル上で、管腔を形成するなどの生物活性を有していた(Hattori K.., Muta M., et al., Pharmaceut.Res., 2001)。一方、血管透過性を調節する因子として知られるAngiopoietin-1(Ang-1)を、ラットより初めてクローニングし、これを高濃度に発現する昆虫細胞系を確立した。この実験系を用いてAng-1のTR-BMEへの効果を検討したところ、Tight Junctionを構築する蛋白の発現を上げることがわかった(Iizasa H., 投稿中)。これらの成果をもとに、順次特異的遺伝子を探索していく予定である。
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