Na^+ channelのサブタイプのひとつであるtetrodotoxin(TTX)抵抗性(TTX-R)Na^+ channelは、侵害刺激反応の伝達に重要な役割を果たしていることが知られている。II型pyrethroid系殺虫剤であるfenvalerateはTTX-R Na^+ channelおよびTTX感受性(TTX-S)Na+ channelの両者に親和性を有するものの、TTX-R Na^+ channelにおいてより強いNa^+の流入を引き起こすことが知られている。本研究では、fenvalerateを髄腔内および足蹠皮下投与した際に誘発される侵害刺激反応に対する糖尿病の影響について検討した。Fenvalerateを髄腔内へ投与することにより、侵害刺激反応類似の行動が誘発された。対照群マウスにおいて、fenvalerateの0.1? 3.0μgの用量範囲で、糖尿病マウスにおいては0.01? 0.1μgの用量範囲において用量依存的な反応時間の延長が認められた。PKC阻害薬であるcalphostin C)により、対照群および糖尿病マウスにおいてともにfenvalerate誘発侵害刺激反応時間の有意な短縮が認められた。PKC活性化薬であるPDBuは、対照群マウスにおいて、fenvalerate誘発侵害刺激反応時間を有意に延長させた。PKCの活性化により、TTX-R Na^+ channelを介したNa^+の流入は増加するもののTTX-S Na^+ channelを介したNa^+の流入は減少することが報告されている。今回、PKCの活性化によりfenvalerate誘発侵害刺激反応が増強されたことから、fenvalerate誘発侵害刺激反応には、TTX-R Na^+ channelの活性化が関与している可能性が示唆された。さらに、糖尿病時にはPKCの活性が上昇していることが報告されている。これらのことから、糖尿病マウスにおいてみられるfenvalerate誘発侵害刺激反応の増加に、PKCの活性化が一部関与していることが示唆された。また、糖尿病マウスにおいては、脊髄におけるNMDA受容体の機能亢進が上位中枢でのμ受容体を介した抗侵害効果の減弱に一部関与していることも明らかとなり、糖尿病マウスにおける有痛性神経障害にも、脊髄でのNMDA受容体の機能変化が一部関与している可能性が示唆された。
|