研究概要 |
平成13年度に続き、14年度は、G蛋白共役型プロテアーゼ受容体PAR-2(protease-accivated receptor-2)が急性炎症時にどのような挙動を示すかを検討した。 1)炎症時血圧低下へのPAR-2の関与とそのメカニズムに関する検討 エンドトキシンを全身性投与することにより、血圧低下が誘起される。この変化にPAR-2が一部関与する可能性を既に我々は報告している。そこで、PAR-2活性化後の血圧低下のメカニズムを検討したところ、一酸化窒素(NO)および血管内皮由来過分極因子(EDHF)の関与がin vivoおよびin vitroにおいて示唆された。 2)エンドトキシン処置による血管PAR-2 mRNA量の変化について PAR-2 mRNAをリアルタイムPCR法を用いて測定する至適条件の検討を行い、安定した測定値を得るためのプロトコールを確立した。次年度は、この方法を用いて、炎症性刺激にともなうラットあるいはヒト血管のPAR-2 mRNA量の変化をin vivo, in vitroで検討する。 3)ラット耳下腺PAR-2活性化による痛みと炎症の発現について 麻酔ラットの耳下腺管開口部よりPAR-2活性化ペプチドを注入することにより、延髄三叉神経尾側亜核に持続性疼痛の指標であるFos蛋白の発現を認めた。この発現は、カプサイシン大量投与によりC線維を破壊しておくと消失した。このことより、PAR-2活性化によりC線維が興奮し、耳下腺における痛みが起こることが示唆された。PAR-2は炎症時に活性化されるとされており、本結果は、耳下腺炎にともなう痛みの発現にPAR-2が関与することを示唆する所見である。現在さらに、炎症にともなう三叉神経節および後根神経節のPAR-2 mRNA量変化について検討している。
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