研究概要 |
G蛋白共役7回細胞膜貫通型受容体に属するProtease-activated receptor(PAR)は4つのファミリーメンバーからなる新しいタイプの受容体であり、炎症、組織損傷、体内出血などの際に活性化され、種々の生理機能を修飾している可能性が示唆されている。そこで、本研究課題においては、急性炎症時におけるPAR、特にPAR-2の役割、挙動について検討した。 はじめに、エンドトキシン(リポポリサッカライド)処置マウスにおいて、唾液腺のPAR-2の感受性がどのように変化するかを検討し、全身性炎症時には唾液腺PAR-2が内因性アゴニスト酵素により持続的に活性化される結果、脱感作状態になっていることが明らかとなった。敗血症ショック時には、PAR活性化作用を持つトロンビン、第VIIa, Xa因子が活性化され、さらに肥満細胞からトリプターゼが遊離される。これらの酵素による血管内皮PAR活性化による血管弛緩が敗血症による低血圧に関与する可能性が十分に考えられる。そこで、PAR活性化による血管の収縮・弛緩反応のメカニズムを解析した。さらに、カプサイシン感受性感覚神経末梢端に存在するとされるPARが炎症性内臓痛や耳下腺炎に伴う痛みの発現に関与する可能性についても検討した。本研究により、PAR、特にPAR-2が炎症あるいはそれに伴う痛み、循環異常など種々の機能の修飾に関与していることが示唆された。
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