研究概要 |
平成13年度計画目標は、糖部分にキレート能を付与し、臨床使用に最適なγ線放出核種であるTc-99m核種で標識して診断用製剤を調製することである。糖部分にTc-99m核種と安定に配位させるために高いキレート能を有する化合物の糖類への付与を設計した。糖類は多くの水酸基を有しているがキレート能は弱く、Tc-99m核種と安定に配位することができない。Diaminedithiol(N2S2)化合物はTc-99m核種と安定に配位できるので、2分子のシステアミン等を付与すればN2S2型の配位構造が可能となる。糖のgeminal水酸基をHIO_4で酸化して生成するアルデヒド基に着目し、システアミンのアミノ基と脱水縮合させる。縮合した化合物は水溶液中では加水分解しやすいのでNaBH_4で還元してN2S2型配位子を付与する方法をデザインした。 まず,糖類のTc-99m標識デザインの有用性を調べる目的でデキストラン、イヌリンやジギトキシンを選択した。デキストランは各種分子量の試薬が容易に入手可能な血漿増量物質であり、イヌリンは腎臓の糸球体からのみ排泄される物質であり、ジギトキシンは強心配糖体である。これらの糖類にキレート物質であるシステアミンを付与した化合物を調製しTc99m標識した。調製したTc-99m標識体の標識率や安定性を調べ、その体内動態をガンマカメラで調べた。また、H-3標識した多糖類のマクロオートラジオグラムと比較検討した。多糖類にシステアミンを付与することにより、従来の報告よりも高い標識率と高い安定性の標識体が得られ、標識化の問題点が克服できた。また、Tc-99m標識体の体内動態はH-3標識した多糖類の体内動態と比較検討した結果、類似していることが明らかになり、デザインした多糖類のTc-99m標識デザインの有用性が示された。
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