研究課題
基盤研究(C)
遺伝子多型の分布には人種差があり高血圧連鎖連関研究への影響が無視できない。すなわち、研究対象によりその病態的意義が異なる可能性がある。その理由として遺伝子・遺伝子や遺伝子・生活習慣の間の相互関係の差の関与が推察されているが、この問題にいかにアプローチしていくかについてこれまで明確な方向性は打ち出されていない。一方、分子人類学におけるヒト系統樹マーカーの研究が進んでいる。特にミトコンドリアとY染色体の多型が各々母系と父系のマーカーとして重視されている。本邦においてはY染色体Alu反復多型(YAP)Alu挿入が縄文系由来を、Alu欠失が弥生系由来を示唆すると考えられている。ある集団のある遺伝子多型に片寄りを認める場合、ヒト系統樹マーカーと連鎖している可能性が仮定できる。そこで本研究では青森県下16市町村より無作為に抽出し本研究に同意の得られた男性303例を対象とし、この仮説を検証した。YAP Alu挿入型は対象の約38%で、本州の他の地域の報告と差は認められなかった。高血圧感受性マーカーとして重要な遺伝子多型とYAPの連鎖の有無について検討したところ、YAPのAlu挿入型とAlu欠失型において、15遺伝子多型中3遺伝子多型(内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型、アルデヒド脱水素酵素-2 Glu487Lys多型、ミトコンドリアC16223T多型)の遺伝子型で分布の差が認められた。さらに、香港大学との協同研究を行い、香港男性ではYAPのAlu欠失型が殆どであることと、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型のa対立遺伝子が偏在していることを確認した。また、YAP自体と高血圧とは連関を認めなかったが、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型とはYAPのAlu挿入型でのみ連関を示した。今回の研究では3つの遺伝子多型がYAPと連鎖不平衡を示した。これらの多型は、YAPが出現した以降に発生しYAPと歩みを共にしてきた可能性が示唆される。また、ヒト系統樹マーカーによる対象集団の層別化が実現すると、連鎖連関研究の臨床的意義が一層明確になる可能性が期待される。
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