多くの疫学研究により、HDL-コレステロールは動脈硬化の負の危険因子であることが報告されている。この事実は、さらにケースコントロールスタディーによって確認されてきた。HDLの抗動脈硬化作用の機序については必ずしも明かではないが、以下の1)2)の機序が推定されている。1)HDL上に存在するparaoxonaseがLDLの酸化を抑制し、動脈硬化を予防する。2)HDLの末梢組織からのコレステロール引き抜き作用。 今回、我々は、アポA1欠損症患者においてparaoxonaseがどこに存在するか、またアポA1が欠損していてもparaoxonase活性は安定かどうかについて検討した。FPLCを用いた検討によりparaoxonaseはアポA1欠損症患者においてもHDL上に存在することが推察された。また血清を37℃で24時間放置したところ、paraoxonase活性は正常血清では19%までに、アポA1欠担症患者の血清では4%までに低下した。 これらの研究により、paraoxonaseはアポA1欠損症患者においてもHDL上に存在するが、アポA1が欠損しているため不安定であることが推定された。
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