研究概要 |
乳酸脱水素酵素(LDH,E.C.1.1.1.27)と結合する免疫グロブリン(M-蛋白例)について,その構造と結合メカニズムを明らかにするため,今年度は以下の実験を行った。 1.患者尿を透析濃縮後,Cibacron Blue 3GA affinity chromatography, DEAE-Sephacelイオン交換クロマトグラフィー,Sephacryl S-300 superfineカラムゲル濾過法により,λ型Bence Jones蛋白(BJP)を精製した。さらに,赤血球溶血液と肝ホモジネート混合試料から5'AMP affinity chromatography, DEAE-Sephacelイオン交換クロマトグラフィーによりLDH1〜5までの各アイソザイムを精製し再結合実験を行った。その結果,患者BJPはmonomer, dimerともLDH3,4,5に対し明らかに強い親和性を示すことが確認された。しかしながら,同時に精製を試みた患者IgG型M-蛋白では明確な再結合が証明されなかったため,他の方法による再結合実験を行い明らかにする予定である。 2.患者精製BJPを用いてWestern blotting分析を行い,分子量からの構造異常の推測を行った。その結果,2-mercaptoethanol(2-ME)存在下では,分子量約28,000のバンドが1本のみであったが,2-ME非存在下では,分子量約44,000〜60,000までの間に明瞭なバンドが3本出現し構造異常の存在が強く示唆された。 通常,免疫グロブリンのH鎖とL鎖のvariable domainは抗体分子の抗原結合特異性に深く関与しているが,L鎖単独では抗原結合活性はないか,非常に低いといわれており,本例のBJP結合例では抗原抗体反応による結合とは到底考え難く,今後さらに2年間にわたり一次構造,二次構造を含めた構造解析などにより,その結合メカニズムを明らかにしたい。
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