研究概要 |
今年度は,乳酸脱水素酵素(LDH, E.C.1.1.1.27)と結合するλ型Bence Jones蛋白(BJP)について,結合に関与するアミノ酸残基を確認するため,以下のような実験を行った。 1.精製した患者BJPを用い。N-末端側のアミノ酸配列をProtein Sequencerにて分析した。その結果,N-末端側から20個のアミノ酸残基はSer-Tyr-Glu-Leu-Thr-Gln-Pro-Ser-Ser-Val-Ser-Val-Ser-Pro-Gly-Gln-Thr-Ala-Thr-Ileという配列であり,既報(Clin Chim Acta 264:163,1997)のLDH結合性を不すBJP例と同様,N-末端側の2番目にはLDH分子のNAD^+結合領域に存在するアミノ酸残基と結合しやすい芳香族アミノ酸の一種のTyrが位置していることが確認された。 2.患者BJPの一次構造解析から得られたアミノ酸配列に従ってN-末端側15残基のペプチドを合成した。合成ペプチドの純度は96.7%であり,その主な特性値は分子量1583.71,等電点3.00,疎水性度33.3%であった。現在,合成ペプチドとLDHとの結合親和性をCounter親和電気泳動法にて行ったところ,明らかにLDHとの親和性が確認された。 3.患者BJPのN-末端側15残基の合成ペプチドをKLH-MBS法にてコンジュゲート後,ウサギに免疫し,polyclonal抗体を作製した。患者精製BJPに抗ペプチド抗体を反応させ,N-末端側をブロック後,LDHとの再結合実験を行い,弱いながらLDHとの結合がブロックされることが判明した。
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