研究概要 |
ヒトの粥状硬化巣の安定化と泡沫細胞死とその機序を明らかにするために、動脈硬化組織における泡沫細胞(foam cells)のアポトーシスと関連蛋白の検出を試みた。近年、ユビキチン関連蛋白の動脈硬化進展に関わる意義が報告されている。そこで、以下の検討をおこなった。A)免疫組織染色による動脈硬化巣中のアポトーシスと各種関連分子の検出:頚動脈狭窄症の手術摘出組織中の動脈硬化巣において、各種の抗体を使用した組織染色により、1)Fas、2)multi-ubiquitin(Ub)、3)細胞特定のための分子(α-actin:血管平滑筋,CD68:マクロファージ(Mp),CD3:T細胞、CD31:血管内皮細胞)の検出をおこなった。アポトーシスはssDNA染色により検出した。B)In situ法による動脈硬化巣中の泡沫細胞のLIG/HIP2の発現:LIG/HIP2のsenseおよびanti-senseプローブを使用してIn situ法による動脈硬化巣中のLIG/HIP2の発現を検討した。その結果、以下のような結果を得た。a)アポトーシスは主としてMp dominant、血管平滑筋細胞(SMC)が混在する領域で散見されたが、Mpがdominantなfoam cellsが集蔟する領域では、アポトーシスは抑制されていた。b)Ubは中膜肥厚部のアポトーシスの少ないSMCで陽性であったが、Mpでは陰性であった。c)LIG/HIP2は、lipid core周辺のMp/foam cellsに発現がみられたが、中膜SMCでの発現は乏しかった。このように、LIGの発現はMpとSMCで異なっていた。現時点では、LIG/HIP2発現の動脈硬化における意義は明らかではない。今後、動脈硬化の組織学的な不安定性の評価をおこない、上記で得られた指標との関連を解析する予定である。
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