近年、致死的な疾患のひとつである血栓性微小血管症(Thrombotic microangiopathy : TMA)の病態に、vWF切断酵素の関与が注目されている。TMAは、微小血管における血小板血栓形成による血小板減少症と破砕赤血球を伴う細血管症性溶血性貧血を特徴とし、精神神経症状や発熱や腎不全などを呈する症候群で、先天性と後天性とが存在する。移植後の免疫抑制剤投与中に発症するTMAは予後因子のひとつとして注目されている。われわれは市販のvWF/FVIII製剤よりにカラムを用いvWF切断酵素の混在のないvWF高分子重合体の純化を行った。健常人のプール血漿にて希釈系列を作成し、希釈系列血漿に一定量の純化vWF高分子重合体とBaCl2を孵置し反応させた後EDTAで反応を停止しマルチマー解析を行い、vWF切断酵素活性の標準検量線を作成した。アッセイ系を確立した後、健常人および患者のクエン酸血漿を用い各種疾患の病態とvWFマルチマーおよびvWF切断酵素活性との関連の解析を行った。健常成人のvWF切断酵素活性は100%であるが、先天性TTPでは3%以下と測定限界以下であった。新鮮凍結血漿7単位輸注後の血小板数回復期においても低値であった。一方、後天性に突然の血小板減少と精神神経症状にて来院し末梢血で破砕赤血球が多数認められた患者では、vWF切断酵素活性は3%以下と測定限界以下であった。患者血清中にvWF切断酵素に対する自己抗体の存在を調べる目的でクロスミキシングテストを行った。すなわち、正常血漿と患者血清の希釈系列を一定時間孵置し、vWF切断酵素アッセイを施行したところ、患者血清中にはvWF切断酵素活性を抑制する自己抗体が存在した。
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