研究概要 |
今年度は、種々のp21 mutantの真核細胞による発現システムを用いて、DNA損傷後のS期進行制御に必須であるp21とCyclinAとの結合制御に焦点を置き、詳細な検討を行った。 1.各種p21のdeletion mutantの作成 p21分子内には、N末端18-21aaにCyclin binding motif(Cy)1、49-71aaにCDK2 binding site、140-143aaにNuclear Localization signal(NLS)1、144-151aaにPCNA binding site、154-157aaにCy2、160-163aaにNLS2の構造を有する。これ以外にも、多くのリン酸化部位が明らかとなってきている。今回の研究では、これらの特徴的な構造をひとつずつ削除したmutantを作成し、それぞれ、N末端tag-mutantとC末端tag-mutantの発現プラスミドを構築した。 2.発現とCyclinA結合解析 p21 mutant発現プラスミドをヒト由来樹立株細胞であるDLD-1にElectroporationで遺伝子導入し、mutant p21蛋白発現の後、DNA損傷として10Gyのガンマ線照射を行った。ガンマ線照射後の細胞から非変性条件下でtag-p21mutantをtagによるNi-アフィニティ精製した。精製したtag-p21mutantから、結合しているCyclin A,CDK2,およびCyclinEを解離させた後、PVDF膜に転写、それぞれの抗体で検出を行いバンドの有無で結合の有無を判定した。 その結果、DNA損傷後のCyclinAとの結合は、N-末端に位置するCy motifもC-末端に位置するCy motifのいずれも要求せず、49-71aaのCDK2結合領域を介していることを明らかとし、報告した。
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