研究概要 |
サイクリンキナーゼインヒゼターp21は、サイクリンキナーゼとの結合と抑制、PCNAとの結合と抑制に加え、アポトーシス抑性能も有する多機能蛋白である。DNA損傷後のp21の挙動が細胞の運命を左右することになるため、その発現制御機構、細胞内蛋白との結合の解析が必須となる。本研究では、以下の3つのテーマについて解析を行い、結論を得た。1.p21のubiquitin-proteasomeによる分解制御領域の決定を種々の欠失mutantの安定性とubiquitin化能の解析により行った。その結果、全長164アミノ酸のうち、C-末端の148-157が効率的なubiquitin化に必須であることが明らかとなった。2.種々のp21 mutantを真核細胞に発現させ、DNA損傷後のCyclinAとの結合制御の検討を行った。その結果、DNA損傷後のCyclinAとの結合は、N-末端に位置するCy motifもC-末端に位置するCy motifのいずれも要求せず、49-71 aaのCDK2結合領域を介していることを明らかとした。3.p21の有するapoptosis制御能の解析を行った。p21のC-末端からの種々の欠失mutantを定常的に発現するHeLa細胞を作成した。p21の1-157領域を発現させた細胞ではapoptosisが抑制されたのに対し、1-147,1-128を発現させた細胞では、apoptosisを抑制できなかった。さらにapoptosis抑制機構を明らかにする目的で、Caspase3,Caspase8,Caspase9を測定したところ、1-157発現細胞ではCaspase9とCaspase3が抑制され、Caspase8は影響を受けなかった。このことから、p21の148-157領域がapoptosis抑制に必須であり、その作用点がCaspase9活性化の下流に位置することが明らかとなった。
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