本研究の目的は、原因不明の出血症状を示す患者の原因を明らかにし、後天性出血性疾患概念の二部を明らかにすることである。当初の症例は、明確な出血症状を呈しているのもかかわらず抗リン脂質抗体(APA)が存在する独特の症例である。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いた分析でその本体を明らかにし、他の循環抗凝血素陽性症例などの出血傾向との関連を比較検討すべく検討を進めている。 本患者血液より分離したIgG結合カラムへの吸着物質を検討する過程で、IgGのFc部分を排除し、Fab部分で検討する必要があることが明らかとなった。その結果患者IgG-protein Aカラムを作成し、結合物の検索をESI、APCI両システムでのLC/MS系の確立を進めている。また、新たに強力なループスアンチコアグラント(LA)を有し、手術でも出血症状を示さない患者を発見した。本患者のAPAは北海道医療大学の家子教授に解析していただき、リン脂質依存性抗プロトロンビン抗体や抗β2グリコプロテイン抗体が確実に存在することを確認していただいた。患者APTTは100秒を超え、FDPD-dimerや梅毒検査など様々な免疫化学的測定法に影響を及ぼすリン脂質系の抗体が存在し、原疾患がリンパ腫であることを明らかにし、2002年の日本臨床臨床化学会総会や日本血栓止血学会学術集会で発表した。 近年、自己免疫疾患の実験動物が報告されつつある。本実験計画にも応用できる可能性を含め、実験動物を用いたラット、マウスの凝固系スクリーニング検査の基礎を検討し、本年実験操作法として報告した。11に示すように5-6月に日本血栓止血学会誌に印刷される予定である。
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