原因不明の循環抗凝血素による出血症状を示した患者にループスアンチコアグラント(LA)様活性を認め、さまざまなLA陽性症例における止血検査異常を中心に様々な検査手法を用いて原因を明らかにし、患者病態の解析を行った。 まず、初年度始めより検討した結果、本患者血液より分離したIgG結合カラムヘの吸着物質を検討する過程で、IgGのFc部分を排除し、Fab部分で検討する必要があることが明らかとなった。その結果患者IgG-protein Aカラムを作成し、結合物の検索が可能となった。 また、新たに強力なループスアンチコアグランド(LA)を有し、接触相や第IX因子に異常低値があり、手術を控えた患者を発見した。患者APTTは100秒を超え、FDPD-dimerや梅毒検査など様々な免疫化学的測定法に影響を及ぼすリン脂質系の抗体が存在する可能性が高いことを明らかにした。本症例は、不明熱とその前後でのAPTT延長が診断のきっかけであったが、脾限局性の腫瘍を摘出する際の止血機能異常をAPTTのみから判断するのではなく、第XI因子の凝固活性値と我々の開発した第XI因子ELISAで抗原量を同時測定し、その蛋白量の豊富さから手術時の出血危険性が少ないことを予見し、実際にも異常出血を認めず、我々の手法・考え方が役立つことを実証した。 さらに、信州大学との共同研究の症例であるが、自己免疫的機序が著しくLAが検査に影響した重症筋無力症患者についても検索しえたので、比較検討のため報告した。本症例でも第XI因子の凝固活性と抗原量の両検索により、胸腺摘出手術に耐えうることを示唆した。 近年、自己免疫疾患の実験動物が報告されつつある。本実験計画にも応用できる可能性を含め、実験動物を用いたラット、マウスの凝固系スクリーニング検査の基礎を検討し、PT、APTTなどの基礎的凝固検査のみならず様々な凝固検査とAPSとの関連で非常に重要な血小板数などの血算に関する実験動物での特殊性を測定機器との兼ね合いで検索し、実験操作法として報告した。
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