研究概要 |
私どもは、HHV-6の持続感染により膠原病の皮膚病変が惹起あるいは修飾されると考え、そのメカニズムについて明らかにするためのモデルの作製を試みた。持続感染系のモデルとしてヒトリンパ球系細胞株JJHAN,MT-4についてそれぞれHHV-6A(U1102株)、HHV-6B(Z29株)を感染させ、長期継代培養を行った細胞を、HHV-6特異的プライマーを用いてRT-PCR法でHHV-6遺伝子発現を、感染様式をHHV-6特異的単クローナル抗体を用いた酵素抗体法で行い、一部の細胞に持続感染しており、JJHANにU1102株を感染させた場合よりMT-4細胞にZ29株を感染させた場合の方が感染細胞の比率が高いことが示された。感染細胞の比率が高かったHHV-6B(Z29)感染MT-4細胞について、細胞株の性状をDNAマイクロアレイ法で非感染MT-4細胞と比較することによりスクリーニングし、最もup regulationされたIP-10遺伝子についてさらに検討を行った。IP-10遺伝子発現を半定量RT-PCR法で、また培養上清中のIP-10をELISA法で定量を行った。HHV-6持続感染MT-4細胞は非感染細胞と比較して、産生が増加していることが示された。IP-10はCXCサブファミリーに属するケモカインで、活性化T細胞に発現する遺伝子として同定されたサイトカインである。また、IP-10は、ヒトの生体内ではPPDによる遅延型アレルギー反応をきたした皮膚局所の表皮および真皮で発現が確認され、INF-γの局所投与でも同様な反応を示すとされている。膠原病の病態形成においては、Th1/Th2サイトカインバランスはINF-γを含むTh1支配的な方向に傾いていることが示唆されており、このようなHHV-6持続感染細胞によるIP-10産生の増強が皮膚症状の発現ないし増悪に影響を与えていることが考えられた。
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