研究概要 |
本年度は身体表現における看護師の視点を明確にすることを目的とし、外来診療時に記述された患者、看護師、医師の表現を比較した。 対象は平成14年6月-8月にG大学病院総合診療部を受診した患者のうち、検診後の精査目的の者および自覚症状のない者を除き、無作為に抽出した280名の諸記録とした。 方法は、それぞれが記述した記録類から、身体表現に関する用語を抽出・分類し、量的・質的に比較した。また、用語の前後の文脈から、表現された意図を推察、分類し、記述に至る視点について考察した。抽出・分類は研究者3名の協議により再現性、妥当性を確保した。 結果(1)身体表現に関する記述数を1例あたりの平均記述数で比較すると、患者4.8±3.5、看護師10.2±8.1、医師18.1±5.2であり、医師の記述数が有意に多かった。 (2)内容で比較すると、患者には時間(出現時期、持続時間など)に関する記述が有意に少なく、医師では、症状に関する記述が多く、特に存在する症状以外に関連する症状がないことを示す記述が多いのが特長であった。医師の特長は、医学診断のための消去法による多角的症状の検索が考えられた。一方、看護師では、量的特長はなかった。 (3)用語の前後の文脈から表現の特長をみると、看護師は症状に伴う生活上の不都合や困難,生活行動と関連させた症状の増強・緩和要因、患者自身が行っている症状緩和のための工夫、症状への思いなど症状に伴う不適応反応やそれらへの対処行動に関する記述があった。これらは看護診断の重要な診断指標であり、看護師が行うフィジカルアセスメントの特長ある視点と考えられた。
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