英国においては、2000年10月より看護補助者の上級資格(NVQ Level3)所持者の大学の看護婦養成コースへの入学が認可された。本研究(平成14年度)においてはこの実態把握のために、第一に、供給源であるNVQ養成サイドから、(1)NVQ(主としてLevel3)の養成コースの実態、(2)NVQ所持者の看護婦養成コースへの進学志望状況を、1)病院で実施されるNVQ養成コースと、2)民間教育機関における学卒者向けNVQ養成コースの2ヶ所での見学とヒアリングによって把握した。この結果、現在のNVQコース受講生は学力・経歴等非常に多彩であり、その進学可能性も個々人によって非常に幅があるが、多くのNVQが進学を希望していること、またその動機は、主として「より高い専門性の獲得」による「より根拠のあるケア提供ができる」「仕事に自身が持てる」「給与条件が良くなる」といった職務満足の追求によるものであることが判明した。また、NVQ養成は、実施機関が病院施設内・外部教育機関のいずれにおいても、国側の規定・「Care Standard Act」に基づき、方式や達成目標が厳密に定められ、非常に標準化された内容で実施されていた。 第二に、看護学部を有する大学において、受け容れ側の看護婦養成コースでの教員、学生(NVQ資格を所持する看護学生)へのヒアリングを実施した。その結果、制度スタート時点の現在は、殆どのNVQ学生は意欲・動機付けの面で肯定的に評価され、これら学生のNVQ経験は、英国看護教育でもかなりの部分を占めるPlacement Study(臨地実習)において生かされ、臨床指導者側の評価も高いことが判明した。しかし一方、多様な年齢・社会人入学者を受け容れている英国の看護系大学においては、とりわけNVQ学生が特別視されることもなく、学生自身もごく自然に学生生活になじんでいた。
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