最終年度にあたる15年度は、(1)14年度に実施した調査の集計・分析、(2)英国において現在進められている医療関連職種全体の業務範囲の見直し、(3)看護系大学におけるNVQ出身学生の実態について、の3点を中心に研究を進めた。 (1)では、NVQおよびNVQ教育担当者を対象とした質問紙調査結果をとりまとめた。英国看護協会が主催する関連学会等に参加した各500名のNVQ/HCAと教育担当者に調査票を配布、返却は郵送法とし、それぞれ123名・44名から回答を得た。調査結果では、教育研修方法の多様性、受講生・教育担当者双方の評価と期待、今後の改善点などが明らかになった。NVQの現在の実践能力(competency)と将来的に望まれるレベルについて尋ねた結果では、NVQ教育担当者いずれの回答も傾向は似ており、特に日常生活援助に関する評価が高かった。 (2)については、現在英国の「技術査定委員会」が実施している実践能力評価にもとづくSkills Standardの作成作業の一例として、経管栄養を受ける患者をめぐる各職種(RN.HCAおよびSpeech Therapist)の能力評価のための調査に同行し、その調査方法、内容について把握した。なお、これらが実際の業務範囲決定にどのように反映されるかについては調査継続中である。 (3)では、看護系大学進学後のNVQ出身学生について、主として実習教育を中心に、現地でのヒアリングや見学を通じて把握した。NVQ出身学生は、「ケア対象者のholisticな理解」を、看護教育による新たなかつ重要な学びであると感じており、他方、実習指導者の評価では、NVQ、一般入学学生の間に特に目立った相違はみられなかった。 以上については、成果報告書において、日本における介護職員教育・制度との比較において分析しとりまとめる。
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