14年度は、13年度に行った13県の大学、短木、専門学校生の調査に追加分を加え、合計有効回答数3034名(97.7%)の調査結果について分析を行った。 Bowlbyの愛着理論に基づいて、幼少期のアタッチメントと現在のアタッチメントである内的作業モデル(Internal Working Model : IWM)についてタイプの判定を行った。判定の結果は、安定型、不安定型、回避型の基本的な3タイプに加え、不安定回避型、混合型、および判定不能型の6タイプが抽出された。この6タイプは、幼少期とIWMでその割合が異なるため、幼少期からIWMに移行する際の移行の内容とその要因について、親子関係、対児感情、外傷体験とその時期等から分析を行なった。その結果、幼少期のアタッチメントの約5割の者がIWMでは別のタィプへ移行しており、IWMが良好なタイプへ移行した者は36%であった。アタッチメントのタイプと親子関係には関連があり、良好なアタッチメントを形成している者は対児感情や子どものイメージを肯定的に捉えていた。また、IWMのタイプの移行には外傷体験の有無やその時期が大きく関与しており、外傷体験の時期が早い者は対人関係の修復が良好であるが、中学生のような多感な時期に外傷体験を経験すると、対人関係の修復が困難であることが示唆された。またIWMで良好なタイプに移行した者は、他者との関わりにおいて有意義な出会いを経験した者が多く、マイナスのタイプに移行した者ではそのような機会を経験していない者が多かった。 以上の結果は平成14年8月に開催された日本思春期学会において発表した。
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