研究概要 |
本研究は、長期間にわたる療養生活が必要な慢性疾患である「がん」患者のQOLの変化を、縦断的に評価し、患者の支援における課題を明らかにしようとするものである。研究期間は13年度〜15年度の3年間に亘って継続的な評価を行う計画である。 14年度は、3年計画の2年目であった。 1年目に引き続き、初年度から使用しているQOL調査票であるEORTCを使用し、継続的に調査した。また、調査対象者にはこれまでの調査結果(QOLの得点表)をグラフ化し、送付した。外来受診時に同意を得られたものについては面接も行った。さらに、共同研究者から外来受診時の情報を得て、医学的な面からの状態把握も行った。14年度は、医療機関の協力を得てホスピスで療養中の患者27人を在宅療養中の者と対照にするために調査を行った。 得られた成果は以下の通りである。 1、EORTCによる継続的なQOL調査対象者は、手術前には27人(男性14人、女性13人)、手術後には19人、術後半年以内には19人となった。対象者の平均年齢は61.7(標準偏差11.2)歳であった。。継続的に調査した対象は、術後2年以内の者は10人、3年以内の者は10人であった。総括的なQOLは術後2年以上3年未満経過した者が最も高く(平均値11.0±2.4:得点幅2〜14)、社会的活動性および精神的活動性は、3年間までの経過の中では術後の経過が長いほど高くなっていた。しかし、認識する活動性や身体活動性は、顕著な変化が見られなかった。身体症状については、手術後は痛みや疲労感が高かったが、その他の症状は手術後顕著な変化は見られず、手術前よりやや改善する程度であった。これらの結果の一部は、論文および下記の学会に報告した(Toshiko TADA, Fumiko HASHIMOTO, Yoshiyasu TERASHIMA, Yasuko MATSUSHITA : The Longitudinal Study of the QOL of Post-Operative Elderly Patients with the Large Intestine Cancer、6^<th> Global Conference Maturity Matters (International Federation on Aging), In Perth (Australia),2002,October27-29) 2、ホスピスで療養中の患者は、全てが大腸がん患者ではなかったが、機能別尺度において在宅療養中の患者と異なる結果を得た。総括的QOLは在宅療養者が11.0±2.4であったのに比べて、7.1±3.1とQOLが低いこと表す結果を得た。さらに精神的活動性においては(この場合は高得点ほどQOLが低いことを示す)、在宅療養者が4.9±1.4であったのに比べて、8.4±43とQOLが低いこと表す結果を得た。
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